北朝鮮の政治動向
北朝鮮のサイバー攻撃に関する調査の一環で、核開発、国内情報産業育成、中朝米朝関係をはじめとする外交などの主要イベントをまとめる試み[^11]
1948年
韓国と北朝鮮が独立する
1950年
- 6月25日 朝鮮人民軍が軍事境界線を超えて、統一のための戦争を開始。
- 10-11月 中国人民義勇軍が参戦
- 11月30日 トルーマン大統領が核兵器の使用を示唆する
1953年
米韓相互防衛条約により米国と韓国が同盟状態に[^8]
1958年
- 3月 第1次朝鮮労働党代表者会。1956年8月全員会議事件以来の権力闘争に金日成が勝利を宣言。「主体」の勝利であり、イデオロギー闘争の形態をとる権力闘争を封殺した。[^1]
1956年
旧ソ連と原子力の研究協定を締結
- 1月10日韓米両国間に協定が締結される。ときの代表者は米側が極東軍司令レムニザー(Lemnizer)と韓国国防長官ソン・ウォンイルである。協定の内容と名前は軍事一級秘密であり、閲覧できるのは国防長官と7235部隊長に限定される。この協定により米軍501軍事情報旅団(501st Military Intelligence Brigade)の活動が強くサポートされることになった[^9]
1958年
1959年
旧ソ連及び中国との間で「原子力平和利用に関する議定書」を調印
1961年
寧辺に原子力研究センターを建設
1962年
中朝国境画定条約の締結
- 金日成が毛沢東に対して「(高句麗の首都だった)集安を北朝鮮にくれ」と要求した。毛沢東はこれを断ったが白頭山と山頂の聖なる池(天池)の要求にはある程度配慮した。結果条約では天池の54.5%が北朝鮮のものとなった。[^2]
- 10月 キューバ危機。ソ連の威信低下
- 11月 金・大平メモによる日韓国交正常化のきざし
- 12月 朝鮮労働党中央委員会第4期第5次全員会議でいわゆる「4大軍事路線」が採択される
金日成「軍隊をこれ以上増員することはできない」結束力と組織力で軍事力を強化することが必要であった
全軍幹部化、全軍現代化、全国土要塞化、全人民武装化
1960年台
米韓同盟と中朝・ソ朝同盟が対立する時代。60年代末までは経済的に北朝鮮が優勢
1961年
- 中朝友好協力相互援助条約が締結される。自動参戦条項、どちらかが攻撃されて戦争状態に陥った場合、他方は全力で軍事援助を行う
1965年
核に関する基礎研究及び実験研究を開始
1966年
北朝鮮魚雷艇による韓国漁船攻撃事件が発生
1966-67年 軍事境界線での南北戦闘
1968年
- 1月21日 青瓦台襲撃未遂事件
- 1月23?28?日 プエブロ号事件発生。北朝鮮はアメリカ海軍保安郡(NSG)のスパイ巡視船を拿捕
- 12月23日 プエブロ号事件についてアメリカ政府が謝罪「アメリカの艦艇が、朝鮮民主主義人民共和国の領海を侵犯し、重大な諜報行為を行っていたことについて、重い責任感で厳粛に謝罪(apology)する」外交文書の表現としては最大級の謝罪
1972年
- 7月 南北共同声明。南北は朝鮮半島の統一についての7項目に合意。祖国統一の3原則の一つ「統一は外勢に依存したり外勢の干渉をうけることなく自主的に解決しなければならない」
1974年
IAEA加盟
- 3月25日 最高人民会議が米議会に書簡「平和協定締結のための交渉を求める」
1975年
- 4月 北ベトナム軍がサイゴンにはいり、南ベトナムが崩壊。直後金日成は中国を訪問し、朝鮮半島統一への支援を要請
軍権を延安派に明け渡す
1980年台
旧ソ連との関係が好転した期間。電子戦の将校を養成する機関を設立するという計画について、ソ連に支援を依頼した[^9]
1984年
ソ連国防部の指導の元、美林講習所(後の美林大学、金一軍事大学、自動化大学)が平壌市寺洞区域美林洞に開かれた[^9]
1985年
北朝鮮がNPTに加盟。ソ連が原子力協力の条件として提示したことも一因。
1986年
美林講習所が5年制の美林大学として平壌市兄弟山区域に開校する[^9]
平壌プログラムセンター(PIC、別名平壌情報センター)が発足する[^22][^9]
- 7月15日 北朝鮮に情報テクノロジー局(Information Technology Bureau)が設置される
1986年から1999年まで、北朝鮮は合計10万名におよぶ大卒、専門大卒の情報通信人材を養成したものの、現在専攻分野で仕事をする人は5000名にすぎない。 "ウラジミール「サイバー北朝鮮」p128"
「優れた技術教育がうけられるのに、高度な技術を身に着けた多数の人に職がない」・・・この状況はロシアとよく似ている。"ウラジミール「サイバー北朝鮮」p128"
1987年
第3次7カ年人民経済発展計画。1つの柱は産業の電算化[^9]
1988年 ソウル五輪
韓国経済の規模拡大、韓国軍の近代化がすすみ、南北の格差が顕著に
- 4月 第一次科学技術発展3カ年計画を公開。情報技術に関する本格的なテコ入れがはじまる。半導体生産、KCCを中心としたコンピュータ・ネットワーク構築などがもりこまれた。1991年からは第二次計画が実施された。[^9]
1989年
フランスのアルカテルが中国で生産した電子交換機を北朝鮮に納入した。[^9]
- 金正日につかえていた日本人料理人藤本健二の記憶によれば、金正日が以下のように問う[^7]
八九年に核兵器について、こうも尋ねられたことがある。
「藤本、わが国が核兵器を持つことには反対か」
そこで、私はこう答えた。 「日本は世界でただ一つの被爆国です。その被爆国の国民として、私は反対です」
1990年台
北朝鮮の核兵器開発疑惑が浮上。IAEAの査察を求める国際社会からの圧力強まる。
90年代はじめ美林大学が金一軍事大学に改称される[^9]
- キム・ヒュンカン(北朝鮮の大学教授。2004年に韓国に亡命)によれば、サイバー攻撃能力の準備は1990年代初頭にはじまった。北朝鮮コンピュータ技術者が中国から帰国し、それが最初の一歩であった オフェンシブサイバー能力開発の発端
- 7月 朝鮮コンピューターセンター(KCC)設置を金正日が指示
- 8月 UNDPの支援をうけ、平壌と主要3都市を結ぶ光ファイバーの設置が完了する
- 10月24日 朝鮮総連の支援含む、5億3000万ドルを投じた、朝鮮コンピューターセンター(KCC)が平壌市万景台区域仙内(ソンネ)洞に設立。同時期に対外情報調査部(調査部→対外調査部→対外情報調査部と名を変え、2003年当時は35号室とよばれた)がKCC内に引っ越した
- 12月17-19日 北朝鮮初のコンテスト「全国プログラム競演」が開始された。[^9]
1991年
ブッシュ政権の一方的な軍縮(unilateral disarmament)政策によって韓国を含む全世界に配置された戦術核兵器が撤退を開始
韓国と北朝鮮は、核兵器の生産、所有、保持等、及びウラン濃縮、プルトニウム抽出を禁止することを掲げた「朝鮮半島の非核化に関する南北共同宣言」に調印
- 1月 日朝国交正常化交渉はじまる
- 12月13日 南北基本合意書採択
1992年
長らく拒否をし続けたIAEAの保障措置協定の調印する
1993年
- 3月2日 北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)からの脱退を宣言。「核保有国の米国からの脅威に直面して、北朝鮮の自主性を維持し、安全を確保するために」と説明した
- 5月 ノドン発射
1994年
- アメリカと北朝鮮の間にジュネーブ合意が採択された
- 金策工業総合大学がオーストラリアとのネットワーク接続に成功[^9]
- 6月 米カーター元大統領と金日成主席の会談。緊張緩和
- 7月8日 金日成死去
- 10月 米朝枠組み合意。米国から北朝鮮への年間50万トンの重油支援、国際機関による軽水炉建設と引き換えに黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉の凍結。KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)が設立される
1995年
- 1月 米国務省が自国の通信企業に対して北朝鮮へのサービス提供を許可
- 4月 AT&Tが商用長距離サービスの北朝鮮への提供開始。国番号は+850
- 12月 藤本によれば核開発による健康被害が金正日に報告される[^7]
九五年十二月三十日、金正日のもとに中央党宣伝煽動部長の金己男が、「将軍様へご報告がございます」と、やって来た。金己男は続けて、「現在核施設で働いている者たちに、歯が抜けたり、髪が抜けるなど、被曝者が続出しています。大変悲惨な状態でございます」
FCCの資料によればアメリカ~北朝鮮間の国際通話の回数は1995年に3169回、1996-3719,1997-25736,
1996年
- 朝鮮中央通信のWebサイトが立ち上がる
- KCCが内閣の省級機関に公式に昇格される
- 4月 PICと大阪情報コンピュータ専門学校(OIC)が共同で平壌に「O&Pトレーニングセンター」を設立した。年間500名の教育を目標に掲げる。[^9]
- 9月 シンガポールで開催されたCOMDEXアジア(マルチメディア展示会)で北朝鮮が出品したソフトウェアが高評価[^9]
1997年
- KCCの建物が火災で全焼する
- 12月 第8次「全国プログラム競演」大会。この年から競演に加えて展示会も併催される
- 12月 金正日の指示により、金策工業総合大学内にコンピュータ情報センターが設けられる[^9]
1998年
- コンピューター囲碁競技会第4回FOST杯でKCC開発の銀星が優勝[^9]
- 50以上の市と郡に光ケーブルが敷設された。この年北朝鮮が国際電気通信連合(ITU)に報告したところによれば、電話加入回線総数は110万回線。[^9]
- 8月31日 テポドン1号ミサイル発射軍事力をバックにした外交が本格的にスタート
1999年
- 科学の年と呼ばれる
- 金日成総合大学内にコンピューター科学大学を設立[^9]
- 金策工業総合大学・平壌電子計算機大学内にプログラミング学科を設立[^9]
- 情報通信を所管する電子工業省が設立[^9]
- 3月 金倉里の地下施設への米国の「参観」
- 5月 NATOのユーゴ空爆を避難。「我が国と地形条件が似ているユーゴスラヴィアに対する米国の侵略行為は、第2の朝鮮侵略戦争のための試験戦争」と評す
- 12月中旬 国家情報院長千容宅が辞任
- 12月23日 国家情報院院長の後任に林東源(元統一部長官)が選ばれる
2000年
- この時期までに、2000台のP-2遠心分離機からなる6つのカスケードがYongbyonに建設されていた。(情報源はSiegfried Hecker)
- 金一軍事大学が自動化大学に改称される[^9]
- 5月 金正日 中国のシリコンバレーとよばれる中関村を視察
- 5月29-31日 金正日の訪中。江沢民との会談
- 毛沢東と金日成の間で「中国の東北部は朝鮮である」という会話が複数回あったことが確認された
- 6月 金大中と金正日の南北首脳会談
- 6月15日 南北共同宣言発表
- 7月 ICANNの一般会員応募に154名が応募。総数は世界中から15万8000名。[^9]
- 12月12日 イギリスと北朝鮮の国交樹立
2001年
- 1月 金正日、中国上海の浦東地区を視察
- 4月 アメリカのEP-3偵察機(コードネーム:ピーターラビット)と中国のF-8戦闘機が中国領空で接触、EP-3偵察機が海南島に非常着陸する
- 5月 金正男の日本への不法入国
- 6月 ブッシュ政権の「北朝鮮政策見直し」
- 9月 幕張メッセで開催されたワールドPCエキスポに北朝鮮が出展[^9]
- 12月18日 天皇陛下の記者会見 いわゆる「ゆかり発言」。公室と朝鮮半島の深い関係に言及
2002年
- 1月29日 ブッシュ大統領が一般教書演説でイラン・イラク・北朝鮮を悪の枢軸と非難
- 9月 日朝平壌宣言
- 10月 ケリー米大統領特使の訪朝。ウラン高濃縮の計画が公に。94年の米朝枠組み合意以降も核開発を継続してきたことを認めざるをえなくなった
2003年
- 1月10日 NPTからの再度脱退を表明。94年に始まった米朝枠組み合意は完全に無実のものに
- これに応じて、中国は技術トラブルを理由に北朝鮮向けの石油供給を少なくとも3日間、止めた。これが6者協議に北朝鮮を応じさせた
- 8月 ウラン高濃縮活動の疑惑解消のため6者協議はじまる
- 8月 コンピューター囲碁競技会「世界コンピュータ囲碁大会岐阜チャレンジ2003」でKCC開発の銀星が優勝
- 7月 .kpドメインの使用開始を宣言。実際に設定が完了したのはもっと後になって。[^9]
2005年
- 2月10日 北朝鮮外務省「米国の敵視政策に対抗するため、自衛のために核兵器を製造した」核保有を公式に宣言する
- 9月15日 米財務省金融犯罪執行機関連絡室(Financial Crime Enforcement Network: FinCEN)が愛国法第311条に基づきバンコ・デルタ・アジアをブラックリストに掲載。米国内の金融機関はBDAとの取引を禁じられる。取り付け騒ぎもおこり、マカオ当局はマネーロンダリングの疑いで北朝鮮が開設した口座および約2400万ドルを凍結した
- 9月19日 第4回6者協議で初の共同声明。北朝鮮のすべての核兵器と既存の核開発計画を放棄しNPTに復帰し、IAEAの査察を受け入れることで合意した
- 10月 米財務省外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control: OFAC)が北朝鮮の8つのエンティティをSDNリストに掲載、米国内の資産凍結
2006年
オランダ人ビジネスマン[^14]によればこの時期までに光明ITセンター(Gwang Myong IT Center)というKCCの関連組織が創設された。光明ITセンターはネットワークとセキュリティに特化し、アンチウイルスソフト、データ暗号化、データ復旧、指紋認証ソフトウェアの開発を行っていた。中国にも拠点があり、日本の金融機関も顧客に名を連ねる
- 7月5日 弾道ミサイル発射
- 10月9日 はじめての核実験
- 爆発威力はTNT火薬換算で1kt(1000トン)未満と見積もられ、小規模の核実験だった。プルトニウム239(Pu-239)の純度が低かったか、あるいは、プルトニウムの爆縮技術が不完全であったか、2通りの原因が考えられた。[^4]
- 10月 国連安全保障理事会は、国連憲章第7章に基づき第41条の下で措置をとるため安保理決議1718号を全会一致で採択。大量破壊兵器に関連する物資やぜいたく品の禁輸、金融資産凍結、北朝鮮に出入りする船舶等の貨物検査等を制裁として科す
2007年
- 2月13日 6者協議の合意の初期段階を受け入れることを明記した共同文書が採択される
- 8月 第2回南北首脳会談。韓国が北朝鮮への大規模支援を約束
- 10月3日 「共同声明実施のための第2段階措置」について合意
2008年
前年の第2段階措置に基づき黒鉛炉の冷却塔を爆破する
2009年
オバマ政権誕生
- 複数の情報機関を整理し、朝鮮人民軍偵察総局(Reconnaissance General Bureau)が発足した。偵察総局は人民軍の一組織であるが、国防委員会に直接報告するパスをもつとされる。初代総局長は金英哲(キム・ヨンチョル)
- 金英哲は1968年のプエブロ号事件での軍事停戦委員会の連絡将校を務めた人物
- 朝鮮半島の西の黄海にひかれた北方限界線(NLL)が無効との主張はじめる
- 4月5日 弾道ミサイルテポドン2号の発射
- 国連安保理が弾道ミサイル発射を非難する議長声明を発表すると、北朝鮮は6者協議への永久不参加と核施設の再稼働を宣言
- 5月25日 核実験(第2回)
- Pu-239の純度を上げたプルトニウムを用い、さらに爆縮技術を改良することによって小型の原子爆弾を完成させた模様。爆発威力はTNT火薬換算で数 ktと推定される。[^4]
- 5月27日 「これ以上休戦協定にはしばられない」
- 6月 国連安保理は前回の制裁を強化する決議1874号を採択
- 7月4日 サイバー攻撃
- MYDOOM、Dozerと呼ばれるマルウェアを使った米国と韓国のWebサイトへのDDOS攻撃。MBRに"独立記念日の思い出"という趣旨のメッセージを残した
- 10月 サイバー攻撃 韓国軍へのスパイ活動
- 2009年10月から同一のグループが、手口を変えながら継続的に軍事機密を取得するための活動を行っていたこともわかっている。特徴はRSA128ビット暗号を利用して総ての通信を秘匿したこと。侵入した組織の内部にある情報のリストを作るプログラムが利用されたことである。判明した11の情報を集めるサーバのうちの1つは"take.chu.jp"という日本のホスティングサービス企業ロリポップ社(GMOグループ)に存在した
- 11月10日 黄海で南北の海軍艦艇が衝突
- 12月21日 黄海の軍事境界線海域を平時海上射撃区域と宣言する
2010年
- アメリカのロスアラモス国立研究所のジークフリード・ヘッカー元所長が訪朝。Yongbyonの施設などを見学。[^20]
- 1月 陸海空統合訓練を実施
- 1月15日 国防委員会「核抑止力に基づいた報復聖戦を開始する」と聖戦の語を初めて用いる
- 3月26日 韓国哨戒艦が北朝鮮潜水艦の重魚雷をうけて沈没。(浅い海での高度な操艦技術を見せた)
- 4月24日 李英浩(リ・ヨンホ、漢字は李英鎬も使われる)が通常戦力による北朝鮮に対する軍事力の報復としても核兵器が使われることを示唆
- 5月20日 韓国による哨戒艦沈没の中間報告、北朝鮮の魚雷を理由として断定した
- 6月 韓国の統一地方選挙。野党の勝利におわる。(韓国政府が)北朝鮮を追い込みすぎるから軍事挑発が起きるという野党への支持者が多かった
- 9月 朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長に金正恩が就任
- 10月10日 閲兵式で対象の階級について金正恩が金正日と一緒に閲兵式に臨んだ。閲兵式ではノドンやムスダンが海外メディアに披露された。同日、中国共産党代表団(周永康団長)の平壌訪問。経済技術協力協定に調印した
- 11月23日 延坪(ヨンビョン)島砲撃事件。同日、中国の郭伯雄(カクハクユウ)中央軍事委員会副主席らの訪朝
2011年
- 1月 新年共同社説で南北交流の必要性にふれる
- 1月5日 南北軍事実務者協議含む交流のよびかけ
- 1月21日 北朝鮮『民主朝鮮』「民族同士が力を合わせて、外部勢力と結託して対決の道を進むべきではない」米韓同盟よりも南北協力を訴える
- 3月 サイバー攻撃
- "Ten days of Rain"と呼ばれるサイバー攻撃。メディア、金融機関、重要インフラ企業のコンピュータが乗っ取られDDOS攻撃の踏み台となった
- 4月 サイバー攻撃
- 7月 6者協議首席代表による会談。交渉再開の機運高まる
- 12月19日 金正日死去が報道される
- 12月30日 朝鮮労働党政治局会議で金正恩が朝鮮人民軍最高司令官となる
2012
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2月15日 偵察総局長金英哲が上将から大将に昇進
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2月23-24日 北京において米朝協議
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2月29日 米朝合意。金正恩体制の北朝鮮が初めて国際社会との合意。交渉の間、北朝鮮がウラン濃縮およびミサイル発射実験を凍結し、見返りとして24万トンの食糧支援を得る。本合意は金正日時代の基本的合意を踏襲。プルトニウムタイプの扱いについては合意の解釈に双方のずれがある
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3月16日 「人工衛星」の発射実験の予告
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4月8日 東倉里「西海衛星発射場」でロケットを海外メディアに公開
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4月11日 朝鮮労働党第4次代表者会で金正恩が第一書記に就任 金正恩体制の発足
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4月12日 最高人民会議で金正恩が第一国防委員長に就任
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4月13日 人工衛星の打ち上げ失敗。失敗を即認めた
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4月15日 金日成生誕100周年祝賀閲兵式で金正恩はじめての演説。「1にも2にも3にも軍隊をあらゆる面から強化していかねばなりません」と先軍政治、遺訓政治の路線をアピール
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4月17日 国連安保理、安保理決議に違反しているとする議長声明を全会一致で採択
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5月 サイバー攻撃(GPSジャミング)
- 韓国政府は2015年4月28日から5月13日の間にGPSのジャミングが北朝鮮におこなわれて民間航空機の運行に支障がでたと北朝鮮政府を非難した。北朝鮮政府はこれに対して「事実無根」と応じた
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5月22日 北朝鮮外務省報道官「核実験のような軍事的措置を予定したことがない」
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6月 マルウェアの通信部分に開発の区切り。これ以降マルウェアの通信部分を担うHTTPSecurityProvider.dllという名前のライブラリが継続して使われるが、それが初めて確認されたのも2012年のタイミングである
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6月9日 サイバー攻撃
- 中央日報のWebサイトが猫の画像に置き換えられただけでなく、紙面編集のためのシステムが一時的に麻痺したとされている
- 攻撃グループは自らをIsOneと名乗ったが、これより前にもこれより後現在に至るまでこのグループの活動は確認されていない
- 韓国当局の捜査により攻撃者が2台の北朝鮮にあるサーバーと17台の10カ国に分散したサーバを利用していたことが判明した。このうち1台のサーバは"Ten days of Rain""Nonghyup銀行がDDOS攻撃(2011・4)"でも使用されていた。
- 6月4日に北朝鮮軍が韓国メディアへの攻撃を予告していた。韓国警察庁は後にこれを北朝鮮からの攻撃と断定
http://mengnews.joins.com/view.aspx?aId=2954219
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7月 金正恩の有力後見人であった李英浩が政治局常務委員、当中央軍事委員会副委員長などの要職を解かれる
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7月18日 金正恩が元帥に就任 (日成、正日は大元帥)
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8月17日 張成沢が訪中し、胡錦濤と会談を行う。「正当性なき金正恩を廃し、兄の金正男を中国の後ろ盾を得て擁立したい」 [^2]のLoc1698
張成沢が金正男を要して、金正恩を廃する計画について中国に打診したというシナリオが提示されている。
胡錦濤は明確な回答をしなかったが、周永康が金正恩にこの計画を伝えたため、張成沢は処刑されたという。そして周永康は2013年末に拘束され、国家機密を北朝鮮に漏洩したことを含む罪で無期懲役の判決を言い渡された。
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秋 偵察総局長金英哲が大将から中将に降格される
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9月1日 サイバー攻撃(心理戦)
- 国家情報院(国情院)が2013年10月29日、与党セヌリ党所属の徐相箕(ソ・サンギ)国会情報委員長に提出した資料「北朝鮮によるツイッター上の大統領選挙介入・宣伝扇動の実態」によれば
北朝鮮は2012年9月1日から12月18日までに対南サイバー心理戦のため、
「我々は一つ」など、フェイスブックに約100個、
「万歳北朝鮮」などユーチューブに約100個、
「今日の北朝鮮」など微博(中国版ツイッター)に約80個、
「我が民族どうし」などツイッターに15個、
「金正恩(キム・ジョンウン)偶像化」など、フリッカー(写真共有サイト)に5個のSNSアカウントを運用している
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12月1日 12月10日から22日の間に「東倉里の西海衛星発射場からロケット銀河3号を用いて人工衛星光明星3号を打ち上げる」と予告
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12月12日 3段ロケットは打ち上げられ、NORADが人工衛星の軌道投入が成功したことを確認。これは実質のテポドンミサイル
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12月17日 米中協議を経て安保理決議2083が採択される
2013年
- 1月 ミサイル発射に関与した北朝鮮の宇宙開発関連部局の幹部らの資産凍結等行う安保理決議2087号を採択
- 1月6日 第3回核実験
- 使用核物質はプルトニウムではなく、ウランだったのではないか、との観測も流れている。実験は成功したと考えられる。爆発威力TNT火薬換算8kt (推定)[^4]
- 2月 金英哲が大将に復帰
- 2月12日 3度めの核実験を強行 → 安保理決議2094号採択
- 3月 金正恩が空軍第447部隊を視察
- 3月20日 サイバー攻撃 Dark Seoul 韓国の放送局、銀行などにたいしてWiperが使われた
- 2013年3月20日に韓国放送公社(KBS)、文化放送(MBC)、YTN、農協、新韓銀行、済州銀行で合計およそ48000台のコンピュータがウイルスに感染した。数日後にはYTN関連の58のサーバ、14の反北朝鮮活動サイト(北朝鮮からの亡命者が運営するものも含む)も攻撃をうけた。データを盗み出す攻撃はそれまでも多く確認されていたものの、データの消去という破壊活動を行うという点においてそれまでのサイバー攻撃とは異質である
- 韓国未来科学技術省のLee Seung-won氏は「攻撃は北朝鮮偵察総局の手口と酷似している。準備は2012年6月頃から段階的に行われていたと見ている」と発言。韓国インターネットセキュリティ庁(KISA)の韓国インターネットセキュリティセンター(KISC)センター長のChun Kil-soo氏は「データを外部に盗む出す行為が確認された。盗み出す先は49箇所あり、国内と国外で約半分づつ。そしてそのうち22箇所は過去のサイバー攻撃で北朝鮮が使用したものである」
- Mcafeeの調査によれば2つのグループが関与した。10000以上のコンピューターで実際にディスクが消去された。Dark SeoulというグループのOperation Troy作戦と整理して解説を行う。一時的にATMからの預金引き出しにも問題が生じた。1つはディスクを消去(Wipe)するマルウェアを作成したグループ。そしてもう1つはNewRomanic Cyber Army Teamと呼ばれるグループである。後者は3月20日関連サイトを改ざんし、データを盗み出したことなどを告げるポップアップメッセージを表示させることで自らの優位を誇示しようと試みた。マルウェアはドロッパー、MBRワイパー、RATの3つに別れていた。そもそもなぜマルウェアが被害企業の内部ネットワークに存在したかという点については、相手に合わせた件名、本文そして添付ファイル名などで油断させて開封させる標的型メール攻撃によるものと考えられている。NewRomanic Cyber Army Team作成のWiperは“hastati”あるいは “principes” という文字列がマルウェアの中に含まれるのが特徴である。次にRATはビルドパスに"z:¥Work¥Make Troy¥3RAT Project¥(後略)"という文字列が含まれており、Troyという単語からこのグループ作成と疑われる
- Mcafeeの主張は2013年の本事案は唐突に実施されたものではなく、少なくとも2009年から着実に準備され、実行された攻撃の一環ということである。これは韓国だけを狙っているという点で他のAPT攻撃と異なっている
- 3月31日 朝鮮労働党中央委員会総会で経済再建と核兵器開発推進の並進の方針が示される[^5]
- 4月 弾道ミサイルが移動して発射可能な状態との報道
- 4月 中央軍事委員会拡大委員会が開催された。金正恩は「反米対決戦で100勝する」とかたったとされる。同時に正恩の側近が中央軍事委員会委員に就任
- 7月27日 黄炳瑞(ファン・ビョンソ)総政治局長「悪の総本山であるホワイトハウスとペンタゴン(国防総省)、太平洋上にある軍基地と米国の大都市に向けて、核弾頭ロケットを発射することになる」
- 12月 最高人民会議常任委員会が新義州に特別経済地域設置、元山など13箇所に経済開発区新設
- 12月12日 張成沢静粛。国家安全保衛部内の軍事裁判で処刑された
2014年
- 3月 最高人民会議代議員選挙。若い代議員が多く当選
- 3月3日 日朝赤十字会談
- 4月 核物理学教育が高校で必須科目に[^10]
- 5月29日 日朝政府間合意
- 6月 サイバー攻撃 韓国鉄道公社へのサイバー攻撃
- コレール(韓国鉄道公社)内部の電算システムがハッキングされ、ネットワーク図や主要情報通信インフラ点検計画など53のファイルが流出した
- 7月4日 日本が北朝鮮に対する制裁緩和
- 11月 クラッパー国家情報長官が訪朝
- 11月 サイバー攻撃 ソニーピクチャーエンターテイメント事案 Lazarus Groupの登場
- 2014年11月にソニーピクチャーエンターテイメント社(以後SPE)がサイバー攻撃を受けた
- Gardian of Peaceというそれまで活動が確認されていないグループがディスクの消去とSPEからのデータ盗み出しに成功したと公表した。Gardian of Peaceはその後、SPEから盗みだした情報を公に暴露していった。暴露された情報は、未公開の映画、ユーザ名やパスワードなどを含むSPE社内ネットワークシステムの詳細、従業員の個人情報、給与や雇用契約に関する情報、TV番組の台本、そして社内メールである
- マルウェアはディスクの消去機能を持つものだけでなく、DDOS攻撃機能をもつもの、キーストローク収集機能をもつもの、そして攻撃者グループと通信して新たな機能を追加できるものが確認されている
- Lazarus Groupは極めて高度な技術を持っているグループとはみなされていないが、その攻撃は耳目を集めた。その理由としてはディスクの削除というスパイ目的が多い既存のAPT攻撃ではあまりとられない手段を大規模に用いたこと。ネットワーク監視による防御網を欺くためにTLS通信に似せたプロトコルをもちいたり、P2P通信を活用したという「クリエイティビティ」などがあげられる
- FBIは北朝鮮政府が本件に関与したという結論に達した。その根拠(の一部)は以下の通りである[^21]
- データを消去するプログラムにFBIが保持する過去の北朝鮮政府が作成したマルウェアとの類似性がみられた。類似性はコードの一部が再利用されていること、暗号アルゴリズム、データ消去の手法、攻撃に利用された踏み台ネットワークである
- データ消去プログラムには司令をダウンロードするサーバのIPアドレスが含まれていた。そのIPアドレスはFBIが北朝鮮との関係を確信するものであった
- ソニーを攻撃する際に使われたマルウェアは2013年3月に韓国の銀行とメディアの攻撃に使われたものと類似していた
- 12月 米国とキューバが国交樹立、直後北朝鮮は外交責任者をキューバのハバナに派遣した。[^10]
- 12月9日 サイバー攻撃 韓国水力原子力株式会社の本部と原発のネットワークにハッキング攻撃が6回加えられた
中国と北朝鮮の関係が悪化しているというよりは、北朝鮮が中国に依存しすぎた状態を是正しつつある。(武貞秀士. (2014). 北朝鮮の軍事戦略と日朝関係. 海外事情, 62(9), 2–17.)
2015年
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4月 金英哲が大将から上将に降格されたとの東京新聞報
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5月 金正恩第一書記臨席で、新型潜水艦(2000トン級)から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験を実施
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10月1日 第70回国連総会。基調講演で李洙墉(リ・スヨン)外相が朝鮮戦争休戦協定を平和協定へ移行することを提案
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10月 劉雲山(中央政治局常務委員序列5位)が訪朝。ここから少なくとも2018年6月まで中朝のハイレベルな接触は行われてない
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12月 北朝鮮から中国に水爆実験についての予告があった可能性。北京におくられていたモランボン楽団が北朝鮮に帰国
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12月 朴槿恵前韓国大統領は、夏から続いていた南北接触が途切れたことを契機に、北朝鮮の指導者の交代を目指すとした国家情報院作成の「リーダーシップ・チェンジ(指導者の交代)作戦」決裁書にサインした。[^6]
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12月21日 3回目の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験を日本海側の新浦港近くで実施
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3月26日 朝鮮中央通信報「共和国インターネット中央研究所は、「原発ハッキング」が「北の犯行」という中間捜査結果が嘘であることを暴いた」
朴槿恵一味は、サイバー攻撃を断行した「原発反対グループ」の実体を正確に捜査する見込みがなくなると、今まで追跡したIPアドレスが中国瀋陽に集中されており、共和国のインターネットIPアドレスとも接続した痕跡があったし、攻撃に利用した語句が「北韓式の表現」であったという証拠でない「証拠」を持ち出して「北の犯行」が確かだという暫定捜査結果をでっち上げて世論に公開した。
公開状は、かいらいがでっち上げたこの事件の「北の犯行」を立証する「キムスキ」悪性コード、IPアドレス、「北朝鮮式表記」などの不当性を暴露した。「キムスキ」悪性コードと言えば、2年前にロシア保安企業である「カスパースカイ」が南朝鮮に浸透するいろいろな悪性コードと当局や会社に接続したコードの分析に基づいてその内容を発表したことのあるコードである。
この悪性コードが自分の動作状態と感染したシステムに対する情報を伝える時に使用した電子メールアドレスが「北朝鮮式の名」である「キムスキ」に登録されているということである。
「キムスキ」はもともと、「キムスクヒャン」であったが、発音が誤伝されてその後、「キムスキ」悪性コードに公認されたという。共和国で「キムスクヒャン」という名前を表記する時、「ヒャン」の字を「Hyang」に表記するが「Kyan(キャン)」と表記しない。
かいらい当局が「北の犯行」に結論付けた核心的な根拠は、悪性コードのIPアドレスが中国瀋陽のIPアドレスに似ているということである。瀋陽にいる朝鮮人の大多数が南朝鮮の人々であり、インターネット回線も南朝鮮の人々と他国の人々のものがはるかに多い。
かいらい政府合同捜査団が瀋陽のIPアドレスを利用した加入者に対する身元の確認を中国司法当局に要請したが、確答は得られなかったという。
- なお瀋陽のホテルと北朝鮮との関係を中国における法人登記などを用いて明らかにした研究がある[^18]
2016年
- 1月3日 金正恩が水爆実験を指示
- 1月6日 水爆実験。「初の水爆実験が成功裏に行われた」との特別重大報道。中でロシアや中国の技術に依拠していないことをアピール。中国の反応が早かった。アメリカは水爆実験が成功したとは判断しなかった
- やはりウランを使用した可能性が指摘されている。北朝鮮側は、「水爆実験」と発表。爆発威力はTNT火薬換算で6~12kt。米CNNは「水素爆弾の 一部だけが作動した可能性がある」との米政府見解を伝えた。[^4]
- 1月8日 韓国が北朝鮮に対する宣伝用の拡声器放送再開。全軍が警戒態勢をとる
- 2月 サイバー攻撃 バングラデシュ中央銀行
- 2016年2月のある週末にバングラデシュ中央銀行の外為為替口座(ニューヨーク連邦準備銀行管理)から、81万ドルがフィリピンの4つの銀行口座に対して送金された。バングラデシュ中央銀行のSWIFTコードが使用された
- 2月7日 光明星4号打ち上げ。テポドン2号改良型
- 2月14日 黄炳瑞(ファン・ビョンソ)人民軍総政治局長侵略に対する核兵器の使用を示唆[^10]
- 2月18日 米North Korea Sanctions and Policy Enhancement Act of 2016が成立。韓国へのサイバー攻撃(ダークソウル)、米国へのサイバー攻撃(SPE)への北朝鮮の関与を明記した上で、独自制裁の対象を北朝鮮の政府関係者や企業に限らず、核やミサイルの開発、マネーロンダリング、サイバー攻撃等にかかわった第三国の企業に広げる法案を上下両院で可決
- 3月2日、米・パワー国連大使が「前例にないほど厳しい制裁」と評した国連安保理決議2270号が採択
国連憲章第7章による法的拘束力をもった決議として、航空燃料の北朝鮮への輸出・供給の禁止、石炭や鉄鉱石の北朝鮮からの輸入禁止、領域内に出入りするすべての北朝鮮の貨物検査、制裁指定された船舶の入港禁止の加盟国への義務付けといった、厳しい制裁が決定された。同決議に対しては当初から、加盟国間の取り組みに差が出ることが予想されていた。特に、貨物検査に関する条項は、機材や人員、方法論といった面で最も差がでやすい。
- 3月7日 米韓合同軍事演習
- 4月10日 第3回万景台(マンギョンデ)賞国際マラソン開催。日本から22名、世界から1000名を超えるランナーが集った
- 4月12日 朴永植(パク・ヨンシク。漢字は朴映式も使われる)人民武力部長侵略に対する核兵器の使用を示唆する発言[^10]
- 5月 朝鮮労働党党大会(36年ぶり)での金正恩の演説。経済の再生と核開発を同時に進める「並進路線」を強調
先端科学技術分野で世界的な競争力を持つ技術を開発するための闘いを力強く繰り広げるべきです。情報技術、ナノ技術、生物工学をはじめ核心基礎技術と新材料技術、新しいエネルギー技術、宇宙技術、核技術など、中心的で牽引力の強い科学技術分野を主要攻略目標と定め、力を集中すべきです。
- 7月 在韓米軍に米国の最新鋭のミサイル防衛システムTHAADが配備
- 7月 中東の空港で中国発エリトリア向けの貨物が押収された。45箱の貨物の中からは、高周波ラジオ、暗号化スピーカー・マイクロホンなど、軍事用途の通信機器類、カモフラージュ用バックパックなどが発見された。国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネルはこの事件の概要を最新の報告書で説明[^17](http://undocs.org/S/2017/ 150, 72-87段落)
航空貨物の送り主は、 “Bei j ing Chengxing
Trading Co. Ltd” (中国語名:北京成兴贸易有限公 司)。同社の代表者は、裴民浩 (Pei Minhao) 氏。 彼は、北朝鮮の大手武器密輸企業・青松連合(国連 安保理制裁対象団体)の中国国内の関係者として、 筆者が国連時代に追跡していた人物である
- 7月14日 Choe Thae Bokを迎えて情報テクノロジー局の30周年イベント
- 8月 潜水艦発射型の弾道ミサイルの発射実験成功(その他同年3月からノドンや中距離弾道ミサイルのムスダンを発射。8月と9月のノドンは日本の排他的経済水域に落下)
- 9月9日 通算5度目の核実験。同日朝鮮中央通信「小型化、軽量化、多様化した核弾頭を思い通りに生産できる」
- 9月20日 ウォール・ストリート・ジャーナル電子版の報道。中国系複合企業の「丹東鴻祥実業発展公司」とその創業者で最高幹部の馬暁紅が北朝鮮の核開発を支援しているとして、中国の公安当局が操作に乗り出した
- 10月10日 朝鮮労働党71周年
- 10月15日 北西部の平安北道亀城でムスダン1発を発射(失敗)
- 11月23日 日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が正式署名される。米国を通じてではなく、日韓での機密情報共有が可能になる。米国は以前からこれを望んでいた
- 11月30日 国連安全保障理事会は安保理決議2321号を全会一致で採択。目玉は北朝鮮の主要な外貨獲得源である石炭の輸出を制限したこと。「北朝鮮の年間外貨収入の30億ドル(約3370億円)の1/3を占める石炭輸出について、年間約4億ドル(約445億円)か、750万トンを上限とすることが決定された」
- 経済制裁について韓国国家情報院は以下のような推定を行っている[^6]
国際社会の制裁強化によって北朝鮮の年間外貨収入は2016年秋までに2億ドル(約227億円)減少した。2015年の外貨収入33億ドルの約6%に相当する数値だ。2016年11月の国連安全保障理事会の新たな制裁決議でさらに8億ドル減ると、国情院は当時予測していた。
- 12月5日 北朝鮮国内で携帯電話事業を展開するエジプトのオラスコムは、北朝鮮にある子会社の銀行「オラバンク」を閉鎖することを発表[^15]
- 2016年を通じて北朝鮮の貿易額が最大なのはフィリピン[^16]
2017年
- 2月13日 金正男がマレーシアのクアラルンプール空港で暗殺される
- 3月20日 朝鮮中央通信「米国は最悪の偽国家である。スノーデンが持ち出した情報によればテレビなどを通じて情報を取得する作戦を行っていた。北朝鮮が犯罪とテロの国というイメージを刷り込む作戦を繰り広げている。」
- 4月6日 フロリダでの米中首脳会談。北朝鮮への圧力も議題の1つ。習近平が「朝鮮半島は中国の一部だった」と発言したという情報あり。[^2]
中国が古代朝鮮半島の大国、高句麗を中国の地方紙に組み入れる歴史書き換えの試み「東北工程」の延長線上とみられる。高句麗が朝鮮国家でないとすると、現在の北朝鮮と韓国の歴史はなりたたなくなる。
朝鮮半島の歴史における中国の出先機関楽浪郡の存在は、現在韓国では無視されている
- 4月14日 Shadow BrokersがETERNALBLUEなどを含む様々なExploitを公開
- 4月25日 確認されている最も初期のWannaCry感染
- 5月3日 朝鮮中央通信 「(中国による北朝鮮への制裁は)レッドラインを超えた」
- 5月12日-13日 サイバー攻撃 WannaCry感染の初期アウトブレーク
- 5月17日 ビットコインの採掘活動が観測される
- 5月19日 北朝鮮のキム・インリョン国連次席大使が、Wannacryと北朝鮮との結びつけについて、「ばかげている」と一蹴した [^3]
次席大使は記者会見で「何か異変が起きると故意に北朝鮮と結びつけ、派手な反北朝鮮運動に乗り出すのは、米国や敵対勢力の常套手段だ」と語った。
- 5月21日 金正恩が立ち会う中、中距離弾道ミサイル北極星2号を打ち上げ
- 5月24日 平壌タイムスKim Rye Yong記者「KBSはじめとする韓国メディアがランサムウェアワナクライについて北朝鮮の関与が疑われると、米政府発表を鵜呑みにして報道しているが、これは過去にも繰り返されてきた半北朝鮮活動の典型である。一部の専門家は北朝鮮説を疑問視し、真犯人は米国だと知っている。」
- 8月11日 渤海と黄海で初めて実戦形式の大規模なミサイル実弾演習を実施。環球時報(人民日報傘下)の8月11日の記事は、1)もし北朝鮮が米国領を威嚇するミサイルを発射し、報復を招いたなら中国は中立を保つ 2)米韓同盟が軍事攻撃で北朝鮮政権の転覆を図り、朝鮮半島の政治版図を変えようとするなら、中国は手段を講じて断固阻止する」と主張。1)については中朝友好協力相互援助条約に定められる自動参戦条項を履行するつもりがないことの意思表示である
- 8月15日 中国は石炭、鉄鉱石、海産物など北朝鮮からの輸入を禁止した。2度のICBM実験を受けて
- 8月21日 労働新聞Pak Song Yong記者「防衛省のサイバー能力拡大は周辺国への攻撃を可能にするものである」
- 過去に事実無根だったものとして、 “March 20 hacking attack”, “GPS signal jamming”, “breakdown of the agricultural federation’s financial computer”, “July 7 network disturbance”, “paralysis of Internet sites of mass media”, “hacking into the network of Seoul National University Hospital” and “unparalleled Internet crisis”を例にあげる
- 9月3日 核実験
- 9月20日 天皇皇后両陛下が埼玉県日高市にある高麗神社を参拝した
- 紀元668年に高句麗が滅亡した後、その生き残りの王族が武蔵野に逃げた。神社は今も高句麗人の高麗氏がつとめる
- 10月2日 朝鮮中央通信「韓国の政治団体参与連帯(People's Solidarity for Participatory Democracy、PSPD)が韓国軍サイバー部隊からの干渉について公表した。」という単なるニュース
- 10月13日 東京新聞が北朝鮮消息筋からの情報を元に「金英哲に代わり張吉成(チャン・ギルソン)が偵察総局長就任」との報道 。韓国メディア中央日報が後追い記事を掲載
- 10月18日 中国共産党大会、北朝鮮は祝電を送ったが、習近平の名に触れていない
- 10月30日 朝鮮欧州協会(Korea-Europe Association)スポークスマンの談話「イギリスの保健省や病院のコンピューターが停止した件は北朝鮮と無関係である。人道と健康に重きを置く北朝鮮が、諸外国のそのような分野にサイバー攻撃をしかけるのは理にかなっていない。」
- 11月 CIA内にKorean Mission Centerが設けられ、人が集められた。[^19]
- 11月16日 北朝鮮外務省副大臣が声明。「11月12日にオーストラリア首相が東アジアサミットにおいて、サイバーを含む北朝鮮の犯罪行為を避難した声明を否定。「米国の操り人形となる以外の内政を目指すべき」
- 11月中旬 習近平特使宋濤(党中央対外連絡部長)を平壌に送る。表向きの理由は19大の成果を伝えるというもの。特使は金正恩に会えずに終わる
- 11月29日 火星15号の発射。大陸間弾道ミサイル(ICBM)
- 12月1日 汪洋(中国、政治局常務委員)が「中国にとって(北)朝鮮はかつて血で固めた友誼を結ぶ国だった。今はそうではなく、対立する関係になっている」(訪中した公明党山口那津男との会談で)
- 12月21日 北朝鮮の外務省「米国がサイバー攻撃の発信源を北朝鮮ときめつけるのは事実無根。フォレンジック証拠を示すべき。」
- 11月? 米国が北朝鮮をテロ国家に再指定。9年ぶり
- 欧州安全保障協力機構(Organization for Security and Co-operation in Europe: OSCE)の報告によれば、現在、推定5万人以上の北朝鮮労働者がヨーロッパを中心に16か国で働いており、年間12億ドル~23億ドル(約1210億円~2320億円)を北朝鮮に送金している[^5]
2018年
- 1月10日 平壌タイムス「日本の宇宙・サイバー司令部創設は自らを破滅に追い込む愚策」
- 2月15日 米情報機関からのリークを基にしたFPの記事。米情報機関の北朝鮮へのシフト、対北朝鮮攻撃の最初の一歩がサイバーになるであろう
という予想など。仮想通貨の人気の高まりを合わせて警告する
- 2月16日 日本が北朝鮮からの脅威についてことさらに煽る理由について、北朝鮮の研究者の発表をまとめたもの
- 3月2日 北朝鮮 外貨獲得と国の分断にサイバー部隊少なくても3000人規模(ロイター・ジャパン)
- 3月9日 日本の仮想通貨取引所へのサイバー攻撃が北朝鮮発とする日本の報道は許しがたい [^13]
- 7月13日 The DiplomatのAスクープ記事「平壌近郊のKangsonに2000年代初頭から高濃度ウラン濃縮施設がある」。現在判明している北朝鮮の秘密核施設はYongbyonにある燃料製造工場とこの施設の2つ
Jeffery Lewisらが指摘し、情報機関の情報源がそれを追認した。[^12]
平壌と南浦を結ぶ高速道路が近くにあり、金日成の生誕地万景台もほど近い。箴進(Chamjin)ミサイル工廠も近い
施設は50mx110mの大きさで、階数や地下の存在は不明
これまで正日、正恩親子が千里馬地区の産業を視察した際に訪問しなかった施設としては最大である。北朝鮮が明確に施設を秘匿しようとしていたことが言える
モニュメントと壁画からがあることは北朝鮮の他の重要拠点と同様に使節の重要性が伝わってくる。冬でも屋上に雪が残っていることがないことから内部で発熱するウラン濃縮工場の可能性が高い。KangsonはYongbyonの施設の実証を目的としていたのかもしれない。
以下、参照文献
[^1]: 平岩俊司, 2010. 金日成と軍事路線 : 四大軍事路線再考. 法學研究 83, 421–444.
[^2]: 中澤克二, 2018. 習近平帝国の暗号 2035. 日本経済新聞社.
[^3]: https://jp.reuters.com/article/cyber-attack-northkorea-idJPL4N1IL4FI
[^4]: 野村旗守, 2016. 狙われる 日本の先端機微技術(Part 2) - 北朝鮮編及び中国編 -. CISTEC Journal 35–48.
[^5]: 小野純子, 2017. 〈3〉 北朝鮮の核実験及び制裁をめぐる歴史と諸状況. CISTEC Journal 151–162.
[^6]: 文藝春秋, 2018. 週刊文春緊急特集 肉声が暴く北朝鮮の闇. 文藝春秋.
[^7]: 藤本 健二, 2008. 金正日の料理人, Kindle版. ed. 扶桑社.
[^8]: 西野純也, 2016. 韓国の安全保障と日米韓協力. CISTEC Journal 104–112.
[^9]: Vladimir, 2003. サイバー北朝鮮. 白夜書房.
[^10]: 武貞秀士, 2016. 北朝鮮の核兵器開発と日本(特集 朝鮮半島の現況). 海外事情 64, 67–76.
[^11]: 明示したもの以外に以下の文献を引用
武貞秀士, 2014. 北朝鮮の軍事戦略と日朝関係. 海外事情 62, 2–17.
平岩俊司, 2010. 金日成と軍事路線 : 四大軍事路線再考. 法學研究 83, 421–444.
平岩俊司, 2013. 北朝鮮・金正恩体制の「遺訓政治」と今後の展望 (朝鮮半島新情勢の構図). 外交 = Diplomacy 18, 108–113.
倉田秀也, 2003. 単極構造と北朝鮮--「不拡散」と「対拡散」の地域的交錯. 国際安全保障 31, 57–74.
宮田敦司, 2016. 「金正恩の軍隊」の実体. 海外事情 64, 15–28.
[^12]: Panda, A., 2018. Exclusive: Revealing Kangson, North Korea’s First Covert Uranium Enrichment Site. The Diplomat.
[^13]: https://kcnawatch.co/newstream/1530443670-610217809/clumsy-farce-of-cyber-terrorists/
[^14]: Tija, P., 2006. North Korea : an upcoming software destination Surprising business opportunities in Pyongyang.
[^15]: 共同, 2016. 【対北制裁】エジプト通信会社が北朝鮮の子会社銀行を閉鎖 米制裁決定受け - 産経ニュース. 産経新聞.
[^16]: 宮本悟, 2017. 〈4〉 北朝鮮と東南アジアの関係. CISTEC Journal 68–74.
[^17]: 古川勝久, 2017. 東南アジアに潜む北朝鮮のネットワーク ― 迂回取引に巻き込まれるリスク. CISTEC Journal 69–85.
国連報告書(http://undocs.org/S/2017/150, 72-87段落)
[^18]: 韓国峨山政策研究院, 先進国防研究センター, 2017. In China ’ s Shadow Exposing North Korean Overseas Networks 中国の影に隠れて ― 北朝鮮の海外ネットワークを暴くー(2016年8月). CISTEC Journal 121–153.
[^19]: JENNA MCLAUGHLIN, 2018. All Eyes on North Korea [WWW Document]. Foreign Policy. URL https://foreignpolicy.com/2018/02/15/north-korea-intelligence-trump/ (accessed 7.16.18).
[^20]: Hecker, S., 2015. What I Saw in North Korea and Why it Matters by Siegfried Hecker (Transcript).
[^21]: FBI National Press Office, 2014. Update on Sony Investigation — FBI [WWW Document]. URL https://www.fbi.gov/news/pressrel/press-releases/update-on-sony-investigation (accessed 9.20.17).
[^22]: Mansourov, A.Y., 2005. BYTES AND BULLETS: Information Technology Revolution and National Security on the Korean Peninsula. the Asia-Pacific Center for Security Studies, Honolulu, Hawaii.